宇佐美

 台風より強烈なハリルの嵐が吹き荒れた。日本代表バヒド・ハリルホジッチ監督(62)が12日、熱望して実現にこぎつけた異例の1泊2日の代表候補合宿(千葉県内)で主役になった。宿舎での体脂肪率チェックからスタートし、ピッチ上で選手とランニング。いの一番にGK陣を指導し、超ハードなトレーニングを課しながら「今日の練習は軽めだ」と選手に通告した。日本の常識を覆すような動きで、強化にまい進する。

 曇天の中、午後5時にスタートした全体練習は1時間45分続いた。ハリルホジッチ監督は鋭い視線を送り、時折声を張り上げた。選手に息つく暇も与えない。狭いスペースで素早い攻守切り替えを意識付けるメニューでは、武藤が負傷し離脱した。ほとんどが10日にJ1の試合を戦ったばかり。中1日の練習としては対人も含め驚きのガチンコメニュー。それでも指揮官は「今日の練習は軽めだ」と言い選手を仰天させた。

 “劇場”の幕は人知れず開いた。国際Aマッチ出場経験のない9人を含む28人の候補選手はまず宿舎で体脂肪を測定された。適正範囲内(8~11%)かどうかをハリルチェック。練習の冒頭、9分28秒の青空ミーティングでは「遅刻や自分の体の管理をしっかりできないヤツは、代表には呼ばない」と通達した。

 断固たる姿勢を示すと、3月の最初の代表合宿と同じように選手とともにランニング。身に着けたビブスはキングの11番だった。選手がピッチを5周半する中、3周目の最後に遅れだし4周目で離脱。セーブした? エネルギーを意外な方向に向けた。

 つかつかと4人で練習を開始したGK陣に歩み寄る。目もとを指さし“よく見ろ”とばかりにインサイドキックを実技指導。フランスリーグで2度得点王になったFWの正確なキックを示した。慌てて樋渡通訳が駆け寄ってきた。「かかとの角度を見てくれ」と言って実演。GKに対する監督の直接指導は珍しい。東口は「ここまで細かく言われたことはないですね」。29歳の誕生日に贈られた“プレゼント”に驚いた。

 その後、練習メニューの合間にはピッチ上に2度、ボードが登場。ポスター大の白い紙に決まり事と布陣が書き込んであり、めくりながら約5分ずつ説明した。「ハイレベルな戦いではディテール(細部)が違いを生む」が口グセ。その通りの行動だった。練習後は宿舎でミーティングを行った。台風6号は温帯低気圧に変わり合宿直撃は回避された。だが、世界を目指すこの代表チームにはそれ以上のエネルギーを持つ指揮官がいた。【八反誠】

<ハリル流アラカルト>

 ◆一緒に食事 3月23日に代表初集合、食事はこれまでの円卓ではなく長卓を並べたスタイルに変更された。監督の話を全員で聞き、そろって食事。全選手一丸を求めた。

 ◆先頭で激走 初練習のランニングに突然参加。約13分間、集団の先頭で選手たちを引っ張った。ランニングだけの短い初日だったが、インパクトは強烈。

 ◆失点ビデオ 練習2日目のミーティングでは、昨年のW杯や1月のアジア杯の失点シーンを編集したビデオを見せた。映像を止めながら問題点を指摘。あえてダメ出し映像を見せることで、選手たちの復活への気持ちを奮い立たせた。

 ◆即カーテン 2日目の練習がいきなり非公開に。チーム立ち上げ直後の練習は、張り巡らされたブルーシートの中で行われた。情報漏れを防ぎ、選手の集中力を高めるのが狙いだ。

 ◆ウルトラマン? 練習後の選手取材は3分限り。時計を手にしたスタッフが付き添い、3分を超えると打ち切られた。

 ◆軽めの調整 ウズベキスタン戦2日前、これまでは戦術練習に時間を割いていたが、3対2の「サッカーバレー」が主。選手のコンディションを考慮。

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